妊娠をすると母体だけでなく胎児にも栄養や酸素を与える必要になり多くの血液が必要になります。
血液の量は妊娠で体が自然に増やしても、それは液体成分である血漿(けっしょう)が増えるだけで、赤血球などの細胞成分はそれほど増えないので血液が薄くなってしまいます。
このことが妊婦さんに貧血が多い理由です。貧血になると病院から鉄剤を処方されるのですが、これがちょっと飲みにくかったりするんですよね…
そこで今回は鉄分を効率よく摂る方法や問題点などレポートしたいと思います。
貧血になったらどうなるの?
【お腹の赤ちゃんは……?】
ママが摂取した鉄は優先的に赤ちゃんへと運ばれるため、ママが貧血気味であっても、お腹の赤ちゃんが栄養不足に陥ることは滅多にありません。それでも、貧血が重症化してしまうと、低出生体重児や未熟児、胎児死亡になる頻度が高くなることがわかっています。
【ママは……?】
ヘモグロビンは酸素と結びつく性質があるため、血液に乗って身体の隅々(すみずみ)まで酸素を届ける役割を担っています。そのため、ヘモグロビンが不足して貧血状態になると酸素不足になり、めまいや立ちくらみ、全身倦怠感、動悸、息切れなどを起こすことがあります。
ヘモグロビンには鉄が必要
赤血球は全身に酸素を行きわたらせる働きをしていますが、その働きを担っているのがヘモグロビンです。
ヘモグロビンは鉄(ヘム)とたんぱく質(グロビン)が結合してできています。
鉄分は体内で作ることが出来ないので、食事で補給しなければなりません。
また、鉄分は吸収されにくいので、鉄分を多く含む食品と吸収を高めてくれる栄養素を合わせて摂るのが最適です。
一度に多量に摂っても吸収に限界があるので、毎日の食事で栄養バランスよく摂ることが大切になります。
鉄分を効率よく摂取する
【吸収率を高める食品と抑制するもの】
食品の中にある鉄分といっても、体内に吸収されやすい「ヘム鉄」とされにくい「非ヘム鉄」に分類されることはご存知ですか?
ヘム鉄は肉や魚などの動物性食品に含まれ、非ヘム鉄は野菜や海藻などの植物性食品に含まれています。
鉄分は、たんぱく質やビタミンCと一緒に摂取すると吸収が高まることが知られており、吸収率が低い非ヘム鉄も、一緒に食べる食品を工夫することで、吸収率を高めることができます。
赤身の肉や魚からはたんぱく質と鉄分が同時に摂れ、かつ肉類に含まれる動物性たんぱく質は非ヘム鉄の吸収も高めてくれます。
赤い色は鉄分の色なので、赤身の食材を積極的に食べるようにするといいですね。
<参考レシピはこちら>
その一方で、米ぬかなどに多く含まれるフィチン酸、紅茶や緑茶に多く含まれるタンニン、ホウレンソウなどに含まれるシュウ酸は鉄分の吸収を抑制するため、注意が必要です。
【鉄の調理器具で簡単に鉄分補給】
鉄鍋や中華鍋、鉄タマゴ(鍋に入れて使う鉄のかたまり)などを使って料理すれば、微量の鉄が溶け出して、鉄分補給ができます。
おすすめは、鉄鍋や中華鍋でみそ汁を作ることです。水を10分加熱してから作ると、たった1杯で日本人の1日の平均不足分が補えます。
※鉄タマゴはホームセンターの台所用品売り場などで購入できます
鉄分の取りすぎに注意
前述のとおり、鉄はもともと体内に吸収されにくいものです。
体の中の腸で調節し、必要以上に吸収されない仕組みになっているので普通の食事でとりすぎることはほとんどありません。
ただし、サプリメントなどで過剰にとり続けると鉄沈着症や先天性異常児出生が多かったという報告から、過不足にならないような食生活が大事になります。
その中でもレバーは鉄分が多い食品の代表格ですが、鉄分以外にも葉酸やビタミンAも多く妊娠初期には摂取量を気にする必要がありますので注意してくださいね。
さいごに
いかがでしたか?妊娠中の女性にはいつも以上に必要になる鉄分をなるべく効率よく摂るためには、食品同士の組み合わせや調理器具に工夫をするなどが大事です。
妊娠初期には「つわり」で食事もままならないこともありますが、お腹の赤ちゃんと自分の健康のために重要な鉄分を摂って貧血にならないよう心がけてくださいね。
[参考文献]
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