10年ほど前から急に見かけることが多くなったメリノウール。羊の品種であるメリノ種から取れる毛を一般的にメリノウールといいます。
仕掛け人は有名な某登山用具メーカーですが急に出てきた新種のウールというわけではありません。
世界的なウールの生産地オーストラリアで飼育されている羊の70%が実はメリノ種です。
取れる毛の質によって品種が違っていてカーペット等に使われる毛はロムニー種が多く、衣類に使われる毛はメリノ種が多いです。セーター等にはふくらみ感が良いシェットランド種が使われることも多かったですが日本人の肌質だとチクチクすることが多く最近はセーターにもほぼメリノ種が使われています。
つまり日本で売られているウール衣類のほぼ全てがメリノウールなのですが実は一口にメリノウールと言っても様々な違いがあります。
今日はメリノウールについて深堀りしようと思います。
メリノウールのランク
メリノウールは非常に多く生産されているので繊維の太さによってランク分けが行われています。
糸の種類
ウールには梳毛(そもう)と紡毛(ぼうもう)という二種類の糸の作り方があります。
でも同じウールだし・・と思いますが糸を作るために必要な工程・紡績機等全く違うので梳毛も紡毛も作ってます!って糸屋さんを私は知りません。ただよくごっちゃになるので紡毛屋さんの方と話してると「ソレは梳毛や!」と怒られ梳毛屋さんと話してると「それは紡毛です!」と怒られます。
ざっくり説明すると紡毛は太くてフワフワしていて、梳毛は細くてすべすべしています。
防縮加工について
ウールは洗濯と摩擦に弱いという欠点があり、その欠点を補うために防縮加工という加工がよく行われます。読んで字の如し縮みを防ぐための加工です。
ウールには人の毛と同じようにスケール状のキューティクルが存在し湿気を含むことによってスケールが開き湿気を含んだ状態で摩擦されることで開いたスケールが絡み合い毛玉になったりフェルト化したりします。つまり縮みます。
色々な防縮方法がありますが大別すると大体3つです。
1,スケールをちょっとだけ削る(バソラン加工)
2,スケールを全部削る(クロイ加工)
3,スケールを全部削って樹脂でコーティングする(クロイラスター加工)
シルクふぁみりぃでは未加工ウールか1か3を使うことが多いです。
まとめ
以上の3つの条件を調べるとウールの感じがわかります。
組み合わせはほぼ無限にありますが参考までにこの組み合わせだとこんな感じってのを書いておきますね。
20.5マイクロン 梳毛糸 バソラン加工
ウールらしいフワッとした風合いを残しつつ柔らかい糸です。
人によってはチクッとします。洗濯はそれほど気を使う必要はありませんが毛玉等は出来やすいので出来るだけ丁寧に扱ってあげましょう。
17.5マイクロン 梳毛糸 クロイラスター加工
ほんとにウール?と思うほどツルツルすべすべした風合いで編み方によっては固く感じることもありますが基本的には非常に柔らかく風合いの良い糸です。ウール特有のチクチクさを感じることもまずありません。
洗濯に対してもかなり耐性は高めですがウールはどこまでいっても湿気と摩擦には弱いです。
ウールスパッツ
16.5マイクロン 梳毛糸 バソラン加工
ウールであってウールではないようなふわふわ感とすべすべ感が共存しているとんでもない風合いの糸です。バソラン加工でウールの良さを残しつつも扱いやすくしてあります。
19.5マイクロン 紡毛糸 未防縮
日本でウールのセーターと言ったら大体このクラスの糸が使われています。
一昔前ならかなり良い部類の糸でしたが今ではほぼどこにでもあるクラスになりました。ちくつきを感じる方もいると思います。扱いも難しく洗濯は余程汚れたときかシーズン終わりに一回ぐらいにしておくのが無難です。
20マイクロン 紡毛糸 クロイ加工
紡毛糸は防縮加工がされているものは珍しいです。風合いはふくらみ感はあるもののカサカサしていることが多いです。個人的にはちょっとつまらない風合いだなと思ってしまいがち。
紡毛なのでウールらしいふくらみ感を出しつつもチクチク感は加工で軽減され洗濯にも強くなるので使い勝手は良くなります。
16.5マイクロン 紡毛糸 未防縮
THEウールというようなふくらみ感とふわふわ感、なおかつ極細の繊維を使っているせいかスベスベとした感触すら感じます。洗濯は大変ですが手間をかけたらかけただけ良い風合いになる糸だと思います。
あわせて読みたい記事